【完】ペテン師との甘い夜
「俺ね、あれから、自分で会社立ち上げたんだ。」
夜の海辺に私と朱美ちゃん…ではなく、朱也は座って話していた。
朱也は今、外資系の会社を経営しているらしく、三年でなかなか波に乗ってきたそうだ。
「今まで忙しくてさ、会う時間無かった。」
微笑んで細くなった灰色の瞳は濁りがなく、三年前のどこにも心のない死んだような瞳じゃなかった。
「ね、伊織チャンは、今をちゃんと生きてる…?」
「生きて…ないかもね。」
二人して見上げた空は澄み渡り星が煌めいていた。