【完】ペテン師との甘い夜



…………まさにその時。



「いーおり。」



…う、そ。でしょう?



背後からありえない声。



振り返ると何度も夢で見た顔。



夢なら、私が抱き着いた瞬間儚く消え去る。



でも……。



「今日は消えないのね………せきぃっ!」



ずっと求めていた温もり。



鼻を掠める甘い香り。



見上げれば細目の青色の瞳。



失ったはずの涙が、私の頬を伝った。



それは、忘れかけていた、温かな温度。
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