【完】ペテン師との甘い夜
美しい指先で奏でるピアノの音はもう私の耳に届かない。



私はただ、栗色の髪の毛のピアニストにくぎづけだった。



「澤木…さん?」



固まった私に、水嶋部長が心配そうに声を掛ける。



私は返事している余裕などなかった。



だって………ありえない。



「セキ…………?」



あのピアニストは間違いなく、百パーセントの確率で



謎めいたペテン師『セキ』だったから。
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