乗務中異状あり
ある日の夜7時、例の銀行
員から
電話が掛ってきた。

それを受けたのは、血気盛んな若い局員T君。
彼は、警察官志望だったが、なぜか
営業マンになり、その後郵便局に流れてきたと言う
面白い正義漢だった。

彼は電話を受けながら....
「あの、もう差出時間は...明日ではいかがでしょう」


...沈黙。


相手が何を話してるかは分からない(当たり前だ)。


突然。

「いい加減にしやがれ!出したきゃ黒猫でも佐川でも
出しやがれ!」

と、T君は電話のフックを押した。


どうしたんだい、と僕が言うと



彼は、怒り心頭に達したと言う顔で言った。



その銀行の集荷時刻は15時で、以降は翌日と言う
約束になっていた。

しかし、その行員の都合で、今日差し出した事にしたい
と言う。

理由は分からないが、おそらく、消印が今日でないと
差出が遅れた責任を問われるのだろう。

それで、封書1通を今から取に来い、と言う。

いくらなんでも、速達でもないのにそれは無いだろうし
第一、5kmも向うの銀行まで
封書一通に往復するわけにも行かない。

そうしたら、その行員は佐川やヤマトはいつでも来る
と言ったと言う
(これは嘘だが)。

なので、T君はそれなら佐川に出しやがれ!と
キレたらしい(笑)。

若いなぁ、と僕は微笑み、集配課の知り合いの
携帯へ電話を掛けた。

集配と言うのは、オートバイで配達をする部署だ。


そのあたりを回っていれば、ついでに郵便を
もらってきてもらおうと思ったのだ。


その彼が手配してくれて、無事に郵便を
もらってくる事が出来た。

でもその行員は当然のような顔をしていたし
電話の応対に激怒していたと言う。


まあ、応対が悪いのは事実だが
過大な要求をするのもどうか、とは思う。
でもまあ、そこを巧くやり過ごすのも営業(笑)。

バイクの機動部隊と、クルマの機動部隊。
ふたつの部署に横のつながりがなく
めいめいに営業しているのが
まあ役所的、でもあった当時の事だ。
今は、統一されたと言う話.....。
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