乗務中異状あり

国鉄の民営化で、職を失って
郵便局に来た、と言う人もいた。

こういう人の中には、とても努力家な人もいて
郵便局長にまでなった、と言う人もいた。

もちろん、外勤の僕らはそんな野心は
さらさらなく、毎日楽しく過ごせれば
それで良いと思っていた。

前に書いた上野さんもそのひとり。

この人は、もともと貿易商だったらしいが
何故か指が欠損しており、その事で
筋者だと誤解されていた(笑)
もちろん、そんなことはなく
気の良い、豪快なおじさん。

ただ、深酒をするので
翌日に酒が残ってしまい、客先で誤解される事もあった。


ある日....


僕が早番で電話番をしていると
客先からタレコミ電話(笑)があった。

「局員が酒酔い運転をしている」


ははあ、あのひとだ。と僕は思ったので

「ご連絡ありがとうございます」と言って
他の車を手配して、交代してもらった。

もちろん、管理職には内緒だ(笑)。

そうした...ところが。

戻ってきた上野さんを、同じ集荷係のばあちゃん
大野さんが「酒臭い!」と大騒ぎしたので

これが上司に知れる事となった。

この大野さん、50歳くらいだと思うのだが
謎の独身、なぜか郵便の薄給だけで食っていると言う
不思議な人だった。それだけに批判的で
細かいことにこだわるタイプ、鷹揚な上野さんとは
だから、根っからあう筈もない(笑)。

それで、告げ口、みたいなとこもあったのだと思う。


僕と上野さん、それに同僚たちは
酒酔い運転を内密にしたという疑惑の罪で
上司の副課長に事情を聞かれた。

僕らは、かくかくしかじか、と話をすると
この副課長(元、国鉄マンである)。は
「よしわかった。俺に任せておけ」と.....。


僕らには何のお咎めもなし。

当然だ。無実だから。
神経過敏な人も多い。酒を飲めない人は
酒の匂い、たばこを吸えない人はたばこの匂いとか。

でもまあ、罪を作ってしまうのはどうかなぁ(笑)。







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