我妻教育
日が落ち、電灯に明かりがともる。
電灯の下で捜索作業を行う、女性陣の顔は、明かりの具合にもよるのだろうが、皆一様に暗い。
どこかから借りてきたのだろう、ホウキとチリトリを使って側溝を探していた。
無言のまま、釈屋久が溝をホウキではき、琴湖がチリトリで受けとり、未礼がすくい出されたゴミの中をあさっていた。
「未礼!!」
はやる気持ちをおさえ、かけ寄りながら未礼を呼んだ。
未礼たちは顔を上げた。
私の弾んだ面持ちと声に、何か良い兆しを感じとったようだ。
女たちは、期待を押し殺した訴えるような瞳で、私の第一声を待っていた。
息をととのえ、未礼の前に立ち、手をさし出した。
私の手の平に、視線が集中する。
琴湖の疲れた顔が明るく輝いた。
釈屋久が桧周とハイタッチをした。
未礼は、私の手元を覗き込むように、かがんだ姿勢のまま、金縛りにでもあったかのように、無言でネックレスを眺めている。
緊張と驚きがまじったような表情だ。
私は、かがんだままの未礼の首に、ネックレスをつけてやった。
持ち主の元へと返ってきた宝石は、私の手の中にあるよりも、よりいっそう輝きを増した、気がした。
未礼は、信じられないような表情で、指でつまんだ馬蹄のモチーフをしばらく眺めていた。
そして、私の顔を見た。
ゆっくりと広がるように未礼の表情が崩れていく。
笑っているのか、泣いているのか、どちらとも取れるような、面持ち。
顔全体に気持ちが表れている。
「啓志郎くん!!!ありがとう!!!」
大きな瞳から涙がこぼれ落ちると同時に、
飛びつくがごとくに私に抱きついた。
「ほんとに、ありがとう〜…」
きつく、しがみついたまま、語尾は震える泣き声で消えた。
「礼には及ばぬ。
それより先に、私は詫びねばならぬ。
2日前の夜は、ここで心細い思いをさせてしまった。すまなかったな」
私にしがみついたまま、未礼は横に首をふった。
心底安堵した。
詫びる機会が、
最高に喜んでもらえた場面において、おとずれたことは幸運だ。
電灯の下で捜索作業を行う、女性陣の顔は、明かりの具合にもよるのだろうが、皆一様に暗い。
どこかから借りてきたのだろう、ホウキとチリトリを使って側溝を探していた。
無言のまま、釈屋久が溝をホウキではき、琴湖がチリトリで受けとり、未礼がすくい出されたゴミの中をあさっていた。
「未礼!!」
はやる気持ちをおさえ、かけ寄りながら未礼を呼んだ。
未礼たちは顔を上げた。
私の弾んだ面持ちと声に、何か良い兆しを感じとったようだ。
女たちは、期待を押し殺した訴えるような瞳で、私の第一声を待っていた。
息をととのえ、未礼の前に立ち、手をさし出した。
私の手の平に、視線が集中する。
琴湖の疲れた顔が明るく輝いた。
釈屋久が桧周とハイタッチをした。
未礼は、私の手元を覗き込むように、かがんだ姿勢のまま、金縛りにでもあったかのように、無言でネックレスを眺めている。
緊張と驚きがまじったような表情だ。
私は、かがんだままの未礼の首に、ネックレスをつけてやった。
持ち主の元へと返ってきた宝石は、私の手の中にあるよりも、よりいっそう輝きを増した、気がした。
未礼は、信じられないような表情で、指でつまんだ馬蹄のモチーフをしばらく眺めていた。
そして、私の顔を見た。
ゆっくりと広がるように未礼の表情が崩れていく。
笑っているのか、泣いているのか、どちらとも取れるような、面持ち。
顔全体に気持ちが表れている。
「啓志郎くん!!!ありがとう!!!」
大きな瞳から涙がこぼれ落ちると同時に、
飛びつくがごとくに私に抱きついた。
「ほんとに、ありがとう〜…」
きつく、しがみついたまま、語尾は震える泣き声で消えた。
「礼には及ばぬ。
それより先に、私は詫びねばならぬ。
2日前の夜は、ここで心細い思いをさせてしまった。すまなかったな」
私にしがみついたまま、未礼は横に首をふった。
心底安堵した。
詫びる機会が、
最高に喜んでもらえた場面において、おとずれたことは幸運だ。