我妻教育
軽い食事を終え、少々展示品を見てまわってから、再び未礼の模擬店前に戻った。


模擬店のテントの周囲には、座って飲食できるように、丸テーブルと椅子がいくつか設置されてあった。

その一つのテーブルを確保し、【たこ焼きケーキ】を買いに行った。


「おう、来たか」

調理担当の桧周が、慣れた手つきでたこ焼きをひっくり返している。
裕福な家庭に育っているにもかかわらず、自宅で料理をしているだけのことはある。

見るからに桧周は、祭礼や縁日の露店にいるテキ屋の若者風で、存外様になっているように感じた。


「いらっしゃい。何にする?」

甘ったるい匂いが充満した店内で、調理担当の九地梨が、爽やかな笑顔で聞いてきた。

客に女生徒が多いのは、甘味だけが目当てというわけではなさそうだ。



「メニューはね、三つあるの」


売り子の未礼が商品の説明をするために私たちの横に並んだ。


品書きをよく見てみると、【チョコバナナ、イチゴミルク、抹茶あずき】と書かれている。


どうやら、【たこ焼きケーキ】の正体は、
ホットケーキ風の甘い生地を球状に焼いて、たこ焼きのような見た目にした甘味だったのだ。


チョコバナナは、具のタコの代わりに、バナナを入れている。
かかっているソースはチョコレートだ。

イチゴミルクは、具にイチゴが、ソースに練乳がかかっており、

抹茶あずきは、抹茶風味の生地に、小豆のあんがかかっている。


思っていたより、まともであった。



「おまたせ~。誰がどれだったっけ?」

焼き上がりを持ってきてくれるというので、テーブル席で待っていた私たちのところに、未礼が、【たこ焼きケーキ】を運んできた。


「とりあえず真ん中に置いてくれ。皆で分けて食べることにしたのだ」

「三つとも味が気になるからネ!!ワオ!!どれも美味しそうだァ!!!」

ジャンが一番に手を伸ばした。

「ウン!!!チョコバナナ、デリシャス!!」


ほおばったままジャンが親指を立てた。
その様子を見て、琴湖も爪楊枝をとった。

「では、啓さま。私たちもいただきましょうか」

「ああ。いただこう」

「ちょっと!!ボクは毒味役かい?!」
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