我妻教育
「後継者は、この私だ。誰にも邪魔はさせぬし、誰にも負けぬ」
自分に言い聞かすように、強く言った。
琴湖も、うなずき同意した。
必ずや、私は、正月に正式に後継者となり、婚約者の未礼を一族に周知させる。
今が一番大事な時期だ。
私も黙ったままではいけない。動かねば。
だが、何をする?
「とにかく今は情報が必要だ。優留単独で何かをしでかすとは考えにくい。優留の周囲の人間の動向や、それ以外の親族のものたちも・・・」
思案する私の顔を見て、琴湖は眉間にしわをよせた。
「未礼さんは大丈夫なんですの?」
「未礼が何だ?」
「後継者争いのことだとか、優留さんのことだとか、とにかく諸々…」
「・・・いや、まだきちんと話してはおらぬ」
正月に、私の婚約者として、松園寺家の人間の目にさらされることも、後継者をめぐる争いが始まりそうだということも。
未礼は、優留が帰ったあのあと、無言になって考えこむ私を気づかってか、何も聞いてこなかった。
今朝も、ほとんど話をしていない。
未礼は、話が見えず意味不明だろうが、今はそれどころではない。
正直今は、未礼に構っていられない。
「・・・まったく」
琴湖が、おおげさにため息をついて首を横にふった。
「何だ」
「また、ご自分のことばかり」
「どういうことだ?」
「もっと未礼さんの立場をお考えになって下さいな」
「私が、後継者になるか否かは、ひいては、未礼の将来にも直結している問題だ」
「だからそれを説明してさしあげないと・・・」
「わからないことばかりでまだ説明できる段階ではない」
「私は、そういうことを言ってるんじゃないんです」
「じゃあ、何が言いたいんだ?」
琴湖は、らちがあかない会話にいらだち、再びため息をついた。
どう言ったらいいものか、と考えをめぐらしているようだ。
私のほうこそ、琴湖が何を言いたいのか理解できない。
「じゃあ、言い方を変えます」
これ以上は話が続かないと判断したのか、琴湖は仕切り直した。
「未礼さんの味方は、啓さま、あなたしかいないんですのよ」
自分に言い聞かすように、強く言った。
琴湖も、うなずき同意した。
必ずや、私は、正月に正式に後継者となり、婚約者の未礼を一族に周知させる。
今が一番大事な時期だ。
私も黙ったままではいけない。動かねば。
だが、何をする?
「とにかく今は情報が必要だ。優留単独で何かをしでかすとは考えにくい。優留の周囲の人間の動向や、それ以外の親族のものたちも・・・」
思案する私の顔を見て、琴湖は眉間にしわをよせた。
「未礼さんは大丈夫なんですの?」
「未礼が何だ?」
「後継者争いのことだとか、優留さんのことだとか、とにかく諸々…」
「・・・いや、まだきちんと話してはおらぬ」
正月に、私の婚約者として、松園寺家の人間の目にさらされることも、後継者をめぐる争いが始まりそうだということも。
未礼は、優留が帰ったあのあと、無言になって考えこむ私を気づかってか、何も聞いてこなかった。
今朝も、ほとんど話をしていない。
未礼は、話が見えず意味不明だろうが、今はそれどころではない。
正直今は、未礼に構っていられない。
「・・・まったく」
琴湖が、おおげさにため息をついて首を横にふった。
「何だ」
「また、ご自分のことばかり」
「どういうことだ?」
「もっと未礼さんの立場をお考えになって下さいな」
「私が、後継者になるか否かは、ひいては、未礼の将来にも直結している問題だ」
「だからそれを説明してさしあげないと・・・」
「わからないことばかりでまだ説明できる段階ではない」
「私は、そういうことを言ってるんじゃないんです」
「じゃあ、何が言いたいんだ?」
琴湖は、らちがあかない会話にいらだち、再びため息をついた。
どう言ったらいいものか、と考えをめぐらしているようだ。
私のほうこそ、琴湖が何を言いたいのか理解できない。
「じゃあ、言い方を変えます」
これ以上は話が続かないと判断したのか、琴湖は仕切り直した。
「未礼さんの味方は、啓さま、あなたしかいないんですのよ」