我妻教育
写真をダウンロードすると、その代金が支援金としてグリーン☆マイムの活動資金になるという寸法らしい。


どの写真も、生き生きとした子どもたちの日常の姿をとらえている。

その、けなげな瞳にうつる世界を想像し、しばらく無言で見入った。



「・・・先日、兄と会ったときに、兄の海外生活の話を聞いたと言っていたな。どんな話をしていたのか、教えてもらいたい」


私と並んで同じように、写真に見入っていた未礼のほうを見た。


未礼は、兄と一晩話をした。
私の知らない兄を知っているのだ。


未礼は、すぐに了承した。

「啓志郎くんには、まだ言わないって、お兄さんと約束したんだけど、今は言うべきだって思うから言うね」

「ああ、頼む」
私は、うなずいた。


「ごめんね。この前、お兄さんと偶然会ったとき、カラオケで話しこんだって言ったけど、実は違うんだ。
ほんとうは、お兄さんと行ったのは、グリーン☆マイムの本部」


「本部?本部はこの近くにあるのか?」


「本部はうちの大学だよ」


未礼の話によると、
グリーン☆マイムの本部(事務所)は、松葉学院大学のサークル棟(サークルや部活動の部室専用の校舎)の一室を使用しているのだという。


兄は渡航後、海外ボランティアの団体に単身参加し、その後、友人と2人で共同でNGOを立ち上げた。

その友人は、兄の昔からの親友で、現松葉学院大学の学生だ。
よって、学長である父に、本部を大学内に設置することを許可されたのだ。

兄が、海外活動要員。
友人は、運営管理専門。

グリーン☆マイムのホームページを運営しているのもその友人だ。



「ね、今から本部に行ってみようか」

私が言おうとしたことを、先に未礼が言った。



兄の誘拐は、重大な国際問題だ。
犯人側とは、依然として膠着したままだという。

国同士どのようなやりとりをしているのか極秘事項であり、親族といえども、特に私は子どもゆえに随時詳しい内容は教えてもらえない。


良いも悪いも、何か大きな動きがあったときのために、家から離れるのは気がひけるが、私はとにかく知りたかった。


知ることのできるすべてを。

兄が、見てきたものを。
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