我妻教育
「啓志郎くん、お茶入れたよ。あったまるよ」


「ああ、ありがとう」

私は未礼と並んでソファーに腰かけた。


テレビに、我が家の門前が映し出された。


「そうだ!!管理人殿は?!我が家だけでなく、グリーン☆マイムの本部にも取材がきているのではないか?!」

私は本部に一人でいるだろう管理人を案じた。


「大丈夫。管理人さんも、ホテルにいるよ。こことは別のホテルだけどね」

「そうか…よかった」



私は、室内に設置してあるパソコンを開き、グリーン☆マイムのホームページを閲覧しようとしたが、ホームページはアクセスが混み合っているようでなかなか開かなかった。

ゆっくり開いていく画像を気長に眺めていた。




「グリーン☆マイムに支援金が殺到してるみたいだよ」

テレビを観ていた未礼が私を呼んだ。

画像のダウンロードや、ワンクリック募金(ホームページ上の、あるページをクリックすると自動的に募金ができるシステム)など、グリーン☆マイムの活動を支援する寄付が殺到しているのだという。

ホームページが繋がりにくいわけだ。


兄が早急に無事解放されるよう願う書き込みも殺到している。




【我々グリーン☆マイムの活動に賛同いただき、まことにありがとうございます。
我々グリーン☆マイムのメンバーも、代表松園寺孝市郎が無事に帰ってくることを信じ、松園寺の意志であるこの活動を継続していく所存です。】


更新されたホームページには、管理人から、寄付やメッセージに対する感謝の言葉が述べられていた。


管理人と兄は、NGOを立ち上げたとき、約束したことがあったという。


治安の悪い現地に行く。
気をつけても、テロや事件に巻きこまれたりするかもしれない。
もしも自分に何かあっても、子どもたちを見捨てないでやってほしい。
活動を続けてほしい…と兄が言った。
管理人は受け入れた。


管理人は、その兄との約束を守り、どこかのホテルの一室を仮の本部とし、兄の帰りを待ちながら、活動を続けているのだ。


目に見えない2人の絆を見た気がした。







「どうだい?!うちの自慢のスウィートルームは?!」









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