我妻教育
「あら、素敵」
珍しく琴湖が身をのりだし、洋菓子をのぞいた。
「好きなだけ召し上がれ!さあ、未礼さんもどうぞ!」
ジャンに勧められた未礼は、遠慮がちに私の顔を見た。
食べたそうにしているのは、聞かずともわかる。
雑誌で読んだことがあるのだが、このプラムホテルの洋菓子は、女性の憧れなのだという。
「せっかくだ。頂くとよい」
「いいのかな…」
「ジャンの好意だ」
未礼の目の奥が輝いた。
口元にも若干の、ゆるみが見られる。
ゆっくりワゴンに近づき、色とりどりの洋菓子を物色している。
「プラムプディングがある!」
「うちのホテルのNo.1さ」
「あたし、コレいっつも売り切れで食べたことなくって…」
抑えぎみに出した声がふるえている。
相当うれしいようだ。
「琴湖ちゃんは、何食べる?」
「迷いますわね…」
選びかねている未礼と琴湖を眺めていると、ジャンが私に寄ってきた。
「啓志郎はどれがいい?プラムロールもおすすめだよ!
スウィーツ食べたら気がまぎれるよ!・・・」
やつれた私の顔を見て、ジャンは悲しげに声のトーンを抑えた。
「・・・ほんとうは、ボクだってわかってるのさ・・・。
気がまぎれたって、なんの助けにもならないってことくらいはね。
もっとリアルに君を助けられるといいんだけどね・・・」
「何を言う。助けられているさ。気をまぎらわすことは、今の私には必要だ」
ジャンが、伏せていた顔を上げた。
私は、洋菓子を皿にのせて、はにかむ未礼を見て言った。
「未礼もずっと元気がなかったのだ。無理はないが・・・。
喜んでいるようだ。よかった。
礼をいう、ジャン」
ジャンは、キラキラした瞳をさらに大きく見開き、笑顔になった。
そして、私の腕をひき、ワゴンに連れて行った。
さすがに有名なだけあって、プラムホテルの洋菓子は絶品だった。
しんみりと甘味が身体の中にしみわたり、頬に血を通わす。
やはり無邪気に楽しめるわけもなかったが、甘味は一時の和みを与えてくれた。
私は、私とともに居てくれる者たちに感謝した。
珍しく琴湖が身をのりだし、洋菓子をのぞいた。
「好きなだけ召し上がれ!さあ、未礼さんもどうぞ!」
ジャンに勧められた未礼は、遠慮がちに私の顔を見た。
食べたそうにしているのは、聞かずともわかる。
雑誌で読んだことがあるのだが、このプラムホテルの洋菓子は、女性の憧れなのだという。
「せっかくだ。頂くとよい」
「いいのかな…」
「ジャンの好意だ」
未礼の目の奥が輝いた。
口元にも若干の、ゆるみが見られる。
ゆっくりワゴンに近づき、色とりどりの洋菓子を物色している。
「プラムプディングがある!」
「うちのホテルのNo.1さ」
「あたし、コレいっつも売り切れで食べたことなくって…」
抑えぎみに出した声がふるえている。
相当うれしいようだ。
「琴湖ちゃんは、何食べる?」
「迷いますわね…」
選びかねている未礼と琴湖を眺めていると、ジャンが私に寄ってきた。
「啓志郎はどれがいい?プラムロールもおすすめだよ!
スウィーツ食べたら気がまぎれるよ!・・・」
やつれた私の顔を見て、ジャンは悲しげに声のトーンを抑えた。
「・・・ほんとうは、ボクだってわかってるのさ・・・。
気がまぎれたって、なんの助けにもならないってことくらいはね。
もっとリアルに君を助けられるといいんだけどね・・・」
「何を言う。助けられているさ。気をまぎらわすことは、今の私には必要だ」
ジャンが、伏せていた顔を上げた。
私は、洋菓子を皿にのせて、はにかむ未礼を見て言った。
「未礼もずっと元気がなかったのだ。無理はないが・・・。
喜んでいるようだ。よかった。
礼をいう、ジャン」
ジャンは、キラキラした瞳をさらに大きく見開き、笑顔になった。
そして、私の腕をひき、ワゴンに連れて行った。
さすがに有名なだけあって、プラムホテルの洋菓子は絶品だった。
しんみりと甘味が身体の中にしみわたり、頬に血を通わす。
やはり無邪気に楽しめるわけもなかったが、甘味は一時の和みを与えてくれた。
私は、私とともに居てくれる者たちに感謝した。