我妻教育
「俺さ、高校出たら親父の会社に入る予定だったんだけど、その前に、お前の兄貴の活動に参加させてもらおうと思って。
社会勉強っていうの?今回こんなことがあったから、親父には反対されたんだけどさ、やっぱ行きたいっていうか…」
「そうだったのか」
「なんていうか、お前の兄貴、タフでカッケーな」
少し話をしただけで、桧周をも惹きこんでいるとは、さすがは我が兄だ。
私は、うなずき苦笑いした。
「馬鹿、とも言うがな」
だがそこには、以前のような苦々しい感情はない。
「井戸を掘るのは、向いてるんじゃなくて?」
琴湖が桧周の体格を見つつ、からかうように言った。
「そうだよね。頼りにしてるよ」
管理人も同意する。
「まぁな。力だけはな」
桧周は、二の腕に力こぶを作った。
グリーン☆マイム本部の室内も、ようやく平穏な空気が戻ったようで、私も安心した。
若干痩せた管理人の心労も癒され、じきに体重も元に戻るだろう。
「あれは…?」
管理人の上にミサンガが置かれているのが目に入った。
その色や形に見覚えがあった。
管理人は、私の視線に気づき、
「これ。さっき帰っていった女の人が作ってくれたんだよ」
ミサンガを私に見せてくれた。
「兄がつけていたのと同じデザインのようだが…」
「そう。今回の誘拐で、どうやらなくしちゃったみたいで、孝市郎のやつ相当しょげてたからね。また同じのを作ってもらったんだ」
兄の手首につけられていた、ミサンガを思い返した。
切れたら願いが叶うという代物のはずが、兄はなぜか、切れども何度も結びなおして使っているようだった。
「先ほどの女性は…」
「頼地の彼女だった女性だよ」
頼地。
兄と管理人とともに山で遭難し、命を落とした人物だ。
「頼地がラグビーの試合で勝てるようにって、彼女が頼地に作ってプレゼントしたんだ。
頼地の奴、すごく大事にしてて。
頼地の形見として孝市郎が頼地の親族から譲り受けたものなんだ」
「そうだったのか…。だから兄上は、何度も結びなおし、大事に使っていたのだな…」
私は、ミサンガを見つめた。
社会勉強っていうの?今回こんなことがあったから、親父には反対されたんだけどさ、やっぱ行きたいっていうか…」
「そうだったのか」
「なんていうか、お前の兄貴、タフでカッケーな」
少し話をしただけで、桧周をも惹きこんでいるとは、さすがは我が兄だ。
私は、うなずき苦笑いした。
「馬鹿、とも言うがな」
だがそこには、以前のような苦々しい感情はない。
「井戸を掘るのは、向いてるんじゃなくて?」
琴湖が桧周の体格を見つつ、からかうように言った。
「そうだよね。頼りにしてるよ」
管理人も同意する。
「まぁな。力だけはな」
桧周は、二の腕に力こぶを作った。
グリーン☆マイム本部の室内も、ようやく平穏な空気が戻ったようで、私も安心した。
若干痩せた管理人の心労も癒され、じきに体重も元に戻るだろう。
「あれは…?」
管理人の上にミサンガが置かれているのが目に入った。
その色や形に見覚えがあった。
管理人は、私の視線に気づき、
「これ。さっき帰っていった女の人が作ってくれたんだよ」
ミサンガを私に見せてくれた。
「兄がつけていたのと同じデザインのようだが…」
「そう。今回の誘拐で、どうやらなくしちゃったみたいで、孝市郎のやつ相当しょげてたからね。また同じのを作ってもらったんだ」
兄の手首につけられていた、ミサンガを思い返した。
切れたら願いが叶うという代物のはずが、兄はなぜか、切れども何度も結びなおして使っているようだった。
「先ほどの女性は…」
「頼地の彼女だった女性だよ」
頼地。
兄と管理人とともに山で遭難し、命を落とした人物だ。
「頼地がラグビーの試合で勝てるようにって、彼女が頼地に作ってプレゼントしたんだ。
頼地の奴、すごく大事にしてて。
頼地の形見として孝市郎が頼地の親族から譲り受けたものなんだ」
「そうだったのか…。だから兄上は、何度も結びなおし、大事に使っていたのだな…」
私は、ミサンガを見つめた。