我妻教育
運転手の言葉に未礼が弁解した。
「違うんですよぉ〜。
あたしが起きるの遅くって、啓志郎くんまで巻き込んじゃって」
そう言うと、私に向かって「ごめんね」と顔の前で手を合わせた。
「あたしのせいで、啓志郎くんまで朝ごはん食べられなかったね…」
「…構わぬ。仕方のないことだ」
「でもお腹すくでしょ。これあげる♪」
鞄の中から菓子を取り出し、私に手渡した。
別に要らぬと思いつつも礼を言っておく。
「…かたじけない」
「まだあるよ」
鞄の中にどれだけ入っているというのだ。
次々と菓子を私の手のひらに乗せていく。
「…まて、もう十分だ」
「そう?遠慮しなくていいのに」
受け取った菓子を自分の鞄の中にしまいこんでいると、
右隣に座る未礼の鞄の中でまたもや携帯電話の振動音が聞こえてきた。
気のせいだろうか、一瞬未礼の表情に緊張が走った。
だがすぐに笑顔に戻ると
「えへへ。ケータイのスヌーズつけっぱだった」
携帯電話の操作をし、鞄の中に放りこむと、続けてポーチを取り出した。
「…車の中で化粧をするのか?」
「しないよ、いつもしてないもん。
化粧なんて毎朝そんな面倒なことできないよ〜。
でも日焼け止めだけ、ね」
身の回りだけでなく、どうやら自分自身に対しても、怠惰であるようだ。
まぁ、着飾らずとも美しいのだから必要ないのだろうが。
「じゃあ、行ってくるね☆」
高等部の門前で、一旦私も車外に出て、未礼をおろす。
「ああ、気をつけて」
「うん。ありがと〜☆」
再び車に乗りこみ、振り返り未礼に会釈をした。
未礼は、弾むように大きく手を振っている。
「行ってらっしゃ〜い!啓志郎く〜ん!」
登校中の生徒たちが、何ごとかと、ちらちらと未礼と私の車を見ている。
それをまるで気にするそぶりもなく未礼は、なんの曇りもない明るい笑顔で、私の車が見えなくなるまで両手で無邪気に手を振っていた。
少々気恥ずかしい。
「可愛らしいお嫁さんですね」
運転手が、ミラーごしに微笑んでいた。
「違うんですよぉ〜。
あたしが起きるの遅くって、啓志郎くんまで巻き込んじゃって」
そう言うと、私に向かって「ごめんね」と顔の前で手を合わせた。
「あたしのせいで、啓志郎くんまで朝ごはん食べられなかったね…」
「…構わぬ。仕方のないことだ」
「でもお腹すくでしょ。これあげる♪」
鞄の中から菓子を取り出し、私に手渡した。
別に要らぬと思いつつも礼を言っておく。
「…かたじけない」
「まだあるよ」
鞄の中にどれだけ入っているというのだ。
次々と菓子を私の手のひらに乗せていく。
「…まて、もう十分だ」
「そう?遠慮しなくていいのに」
受け取った菓子を自分の鞄の中にしまいこんでいると、
右隣に座る未礼の鞄の中でまたもや携帯電話の振動音が聞こえてきた。
気のせいだろうか、一瞬未礼の表情に緊張が走った。
だがすぐに笑顔に戻ると
「えへへ。ケータイのスヌーズつけっぱだった」
携帯電話の操作をし、鞄の中に放りこむと、続けてポーチを取り出した。
「…車の中で化粧をするのか?」
「しないよ、いつもしてないもん。
化粧なんて毎朝そんな面倒なことできないよ〜。
でも日焼け止めだけ、ね」
身の回りだけでなく、どうやら自分自身に対しても、怠惰であるようだ。
まぁ、着飾らずとも美しいのだから必要ないのだろうが。
「じゃあ、行ってくるね☆」
高等部の門前で、一旦私も車外に出て、未礼をおろす。
「ああ、気をつけて」
「うん。ありがと〜☆」
再び車に乗りこみ、振り返り未礼に会釈をした。
未礼は、弾むように大きく手を振っている。
「行ってらっしゃ〜い!啓志郎く〜ん!」
登校中の生徒たちが、何ごとかと、ちらちらと未礼と私の車を見ている。
それをまるで気にするそぶりもなく未礼は、なんの曇りもない明るい笑顔で、私の車が見えなくなるまで両手で無邪気に手を振っていた。
少々気恥ずかしい。
「可愛らしいお嫁さんですね」
運転手が、ミラーごしに微笑んでいた。