我妻教育
「あんたには関係ないから引っ込んでて!」
言い捨てると琴湖は、ジャンから視線をそらした。


「ワァーオ!ひどーい!仲間外れにするなんてぇ〜!
なぁ、啓志郎ォ」

ジャンは、話すときはいつもいちいち身振り手振りのオーバーリアクションで、かなりうっとうしい存在だ。


「梅乃木。呼び捨てにするなと何度言えばわかるのだ」

「ボクらの仲じゃないか。
キミはボクの永遠のライバルであり、フレンドなんだから…ッてなんでため息!?」


「あんたなんて友だちじゃないって言ってんのよ。
うざいのよ、朝からそのテンション」
私に続いて琴湖もおおげさにため息をついた。


「ボクは普通だよ!二人がテンション低すぎるだけだろォ」
ジャンも、おおげさに傷ついた顔をする。


「だいたい何がライバルよ。万年二位のくせに!!」

「いィーや、次のテストは自信がある!
今度こそ、ボクがトップだ。覚悟してろよ啓志郎!」

「毎回同じことを言っているではないか」

「ノンノン!!今度こそは、だ!!勝負だ!」

「無駄だ」

「そうよ。啓さまにかなうわけないじゃない。
あんたはとっとと亀に餌でもやりに行きなさいよ」

「あァ〜、そうだ、そうだった!当番だ」

ジャンは、バレエを踊るような歩調で、教室の隅で飼われている亀のもとへ軽やかに移動した。
金髪と白いフリルタイをなびかせて。



梅乃木 ジャン。

高級ホテルチェーン『The Plum Tree Hotel』の御曹司である。

日本人の父とフランス人の母を持つジャンは、ハーフらしく、はっきりと整った目鼻立ちをしており、
絵画に描かれている天使のような天然パーマの金髪に碧眼だ。

白いフリルタイのついたブラウスに白いハイソックスを着用している。

本人は、童話に出てくる王子様を意識しているらしいが、
…そのブラウスは、校則違反だと何度言えばわかるのだ。


特技は、フェンシングとフィギュアスケート。

フィギュアスケート界では有望な選手として名高い。
銀盤のプリンスなどと、もてはやされている。


ジャンは、3年生のときに我が松葉学院に転入してきた。


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