夢の国のアリス
Prologue-二人の樹の下で-
村外れの大きな樹の下
そこは、わたし達のお気に入りの遊び場だった。
アリスとウォルナットの指定席、村の大人達がそう呼ぶ場所
いつでもわたし達を温かく迎えてくれた、真昼の木陰
あの日もわたし達はそこにいたんだ。
「ねぇ、次はなにする?」
「うーんと…アリスの好きなことでいいよ。」
「わたしもウォルナットの好きなことでいいー。」
あの頃は特に楽しいことがなくても、よく二人で笑ってた
近所のおばあさんの飼ってた黒い子猫が、ミルクをこぼして白いまだら模様になっちゃったとか
とにかく、くだらないことでも。
好きだった
彼の、ウォルナットの笑う顔。
短くてふわふわした金髪も、空色の瞳も
それは幼いながらに“友達”以上の気持ちだったって、今はそう思う。
あの頃のわたしはただ、
「「ずっと一緒にいよう」」
指切りで交わした、そんな子供らしい二人だけの約束を信じて
そうありたいと願っていた、
子供だった。