夢の国のアリス
「それはどーして?ママ?」
「…その“お話”はね…」
あどけない表情で、
わたしを見返してくる娘に、わたしはひとり呟くように言った。
どうか、娘が二度とこの話を
誰からも聞かないよう
口にしないよう
“不思議の国”になんか、行かないよう
―その“お話”は、“大事なもの”をなくしてしまう“お話”だから―
と。
「ふぅん…大事なものって、ミシェのママやパパのこと…?」
娘は薄暗い中、可愛らしく小首を傾げて
わたしに尋ねてきた。