夢の国のアリス
大切な人
夜も更けて、
さすがに火のないリビングは冷え込んだ。
ポンポン、
「―ただいま、アリス。こんな場所で眠ってはいけないよ?」
肩への小さな刺激と
優しく静かな声にわたしは瞼を開けた。
わたしはいつの間にか、リビングのテーブルで眠っていてしまったようだった
…大切な人の帰りを待ちながら。
「あ…お帰りなさい、ディック…」
「ただいま。…アリス、頬にテーブルの跡がついてるよ?」
わたし達は、ただいまのキスは交わさないで
その代わりにお互いの手を握りながら、
今のわたしの大切な人は、クスクスとわたしを見て笑った。