夢の国のアリス
大人になっても
側にある温もりだけが、
恋しいわけではなくて。
「よく眠っているね。」
「…うん。」
娘を起こさないようにして
わたしとディックは、いつものように
ミシェルを挟んで、川の字で眠ろうとしていた。
平穏で、優しくて、
“幸せ”な時間、日々。
それでも君を望むのは
わたしのわがままだろうか。
「…考え込んでいないで眠りなさい、アリス。明日も早いよ。」
「…はい。…おやすみなさい、あなた。」
わたしの様子に気付いたディックは、
苦笑いをして、静かにランプを消して
「おやすみ、アリス。良い夢を…」
お守りのような言葉を残して
しばらくして眠りについた。