夢の国のアリス
白兎は歩き続けたまま、
わたしを振り返らずに言う。
「あの少年を待たずに、先に“不思議の国”へいかないかい?」
実は“不思議の国”へ入れるのは、一日に一人だけなんだ…
白兎の、そんな取って付けたような言葉
だけど、なぜだか今のわたしはそれすら信じてしまう。
だけど
「…ダメ、よ……ウォルナットが一緒じゃなきゃ…一緒じゃなきゃ…」
「“一緒じゃなきゃ”?」
ちゃんと歩けているのに
ちゃんと喋れているのに
思考だけが、狂わされていく感覚。
でも、
でもね…
白兎はなかなか続きを言えない、わたしの答えを待つ。