夢の国のアリス
痛みのための雫
これは悪夢だ
そう気付くのが、今だったなんて。
「いやっ、いやぁっ…放してよっ!」
髪に、首に、
腕に足に、指先にまで
強い力で絡みつく茨。
茨の根元は、
白兎の背中に現われた、小さな柩。
「ダメだって言ってるでしょう?こうしないと…“アリス”は逃げてしまうからね。」
「助けてっ、ウォルナットー…!」
茨の刺さる痛みに
白兎の冷たい声に、
わたしは必死で、ウォルナットの名前を叫ぶ。
わたしは、白兎の背中の茨に捕らわれ
どこかへ―
“不思議の国”へと、無理やり引きずられている。
最初の暗い暗い森のような、
だけど、妙に開けた場所
違うのは、今は怖くて仕方がない白兎。