夢の国のアリス


そしてひとつ、森と同じなのは


ウォルナットがいないこと―。




「う……ウォルナット……ウォルナットォ…ッ。」



色んな感情で熱くなる目から

涙がポロポロと零れ、頬を伝い、茨に落ち

直に消えてなくなる。




―助けにきて。

―わたし、“不思議の国”になんかいきたくない…。

―お願い、ウォルナット…。




「こないさ、あの少年はね。…くる前に、“アリス”はいなくなるしさ?」

「ッ…!」



こちらを振り向いた白兎が、

赤い目で笑う。



その絶望を突き付ける言葉に

胸がたまらなく痛くなる

溢れてくる涙が、止まらなくなる。

< 54 / 83 >

この作品をシェア

pagetop