夢の国のアリス
ピタッ、と
急に白兎が立ち止まった。
背中側に縛られ、見えない背後の景色から
嫌な、恐ろしいものの気配が溢れてくるのがわかる。
「こっちを向いてご覧、“アリス”―。」
白兎の言葉で
体中の茨の力が緩み、
その茨はわたしを、白兎の向く方へ縛りつけた。
―見たくない、
本能的に目を閉じようとして
できないことに気付く。
「…!!」
「ここが、“不思議の国”の入口だよ…“おかえり、アリス”…。」
悍ましいくらい低い、白兎の声に
目の前の“現実”に、体が震える。
そこには、深くて
暗い、
闇の底への巨大な縦穴が、空いていたから―。