夢の国のアリス
Epilogue-一人の樹の下で-
あの時
目が覚めると
もう日が暮れていた。
大きな樹の幹に
寄りかかる二人の影が
仲良く並んでいた。
―良かった…夢だ…
隣りで寝息を立てる
きみを見て安堵した。
……
…目を…覚ましてよ…
…話しかけても
…体を揺さぶっても
…きみは目を覚まさなかった。
悪い、冗談だよね?
わたしは、
涙声で呟いた。
本当に
夢だったら良かったと
何千回思っただろう。
…きみは
…本当に“不思議の国”に行ってしまった。
わたしの、
代わりに……。
―あの日から、きみが目を覚ますことは
―あれから十九年経つ今も
―…一度もない。