ぴーす
「あたし何にも悪いことしてねーからな!!」


いつもと違う口調の真由ちゃんは、犬みたいにワンワンと吠える。
真由ちゃんの言葉を引き金に、ガランと心の何かが剥がれた。



バチンッ



友達に止められてる真由ちゃんの頬に、あたしは平手打ちをしていた。

真由ちゃんは顔を傾けたまま動こうとしない。
周りにいた皆も、時が止まったかのようにピクリともしない。


「……やっぱ、最低だ……」



真由ちゃんに向けてなのか自分に向けてなのか、隣の教室から聞こえる笑い声にかき消された言葉は、とにかくあたしの本心からだった。


ボー然としている皆を見ながら、ドアへ向かう。



「あ……」



芽亜莉……。



ドアの後ろで、芽亜莉が皆と同じようにボー然としながら立っていた。


「来てくれたんだ……」


そう呟いたら、芽亜莉がコクンと頷いた。
右手がヒリヒリと痛みだす。


そうだ、真由ちゃんビンタしちゃったんだっけ……。

あたしはまだ感触の残る右手を見ながら、そのまま芽亜莉の横を通りすぎた。











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