ぴーす
「ありがと」
素直になれない性格は、ちょっと中野と似ているかもしれない。
あたしは投げ渡された青チェックのマフラーを首に巻き始める。
前より髪が長くなっているから、ちょっと巻きにくい。
それにしても、中野がマフラーを取るなんて珍しい。
そう思って、中野の首を見ていた。
あたしが想像していた学ランの襟元と違って、なぜか青い。
「2個巻きすか……」
呆れながら言ったあたしの言葉通り、中野はもう一個、ただの青いマフラーを巻いていた。
「寒いじゃん」
そのあとにハァと出した中野の息は、白く濁っていた。
空は青い。
中野の息が白いとすぐにわかる。
この空は、いろんな人が見上げているんだね。
あたしも
中野も
芽亜莉も
真由ちゃんも
山さんも
しずるちゃんも
お母さんも
お兄も
院長も
先生も
この広い空の、
下にいるんだね。
この地球の、
上にいるんだね。