ぴーす
そう思って、テニスコートをキョロキョロと見回すと、芽亜莉がこっちを向いて立っていた。

芽亜莉はいつものように笑いながら、あたしに手を振ってくる。



あ……。


それに気づいて、カバンを左手に持ち変えて右手を上げかける。



“芽亜莉ってさ、目ぇ怖くない?”


“あたしもそう思ってたからだよ……”



さっきのことを思い出して、あたしはこのまま手を上げるのを手間取った。

だけど、カバンをギューっと握りしめて、俯きながら手をゆっくりと上げる。


目を開けてみたら、もう芽亜莉はそこにはいなかった。

あたしはまだ完全に上げられなかった手を、スッと下ろそうとする。



ガシャンッ



ものすごい音が、あたしのすぐ横を通った。









< 20 / 109 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop