ぴーす
「大丈夫っしょ、あたしは! 話したのだってせめて2、3回じゃん?」


初めて話したのだって昨日。
好きなわけじゃないし、これだけで好きとか勘違いはしないでしょ?


「……でも真由ちゃん、毎日話しかけてるけどまともに話してるとこ見たことないよ」


「……」


たしかに、男子とも全然しゃべんないもんな……。


「あと、夏休み前告ったらしいけど、今だに返事こないんだって」


「マジ!?」


あたしは冷え切っている腕をさすりながら歩いていく。
だけどみっちゃんが言った言葉に、さする手が止まってしまった。

夏休み前って……明日から冬休みだよ!?

おいおい中野!!




「こんな寒いのになんで体育館でイス並べだよぉっ!」


誰もいない廊下で叫んだあたしの声は、白く染まった息とともに遠くまで昇って消えた。


「早く1階行こ……。ここ標高高いから寒いんだよきっと」


と、訳わかんないことを言い出したみっちゃんと一緒に、階段を一段一段下がっていった。




ただ、この3階から下がっていくうちに、


黒い巻き渦がどんどんとあたしに近づいていっていた――。









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