ぴーす
先生は
なんにも見てないよ――。
心の中にその言葉を投げ捨てた瞬間、ちょうどテニス部のジャージを来た男子を見つけた。
みっちゃんのほうとすれ違い、抜けていく。
テニス部に入ったばかりの芽亜莉の笑顔が浮かんだ。
男子が動いてジャージがこすれる音と、芽亜莉が嬉しそうにテニス部専用のジャージを見せてきたときの記憶が、見事に重なった。
生徒をもっと見てよ。
芽亜莉を、もっと見てよ――。
昨日、女子全員が急に芽亜莉を無視し始めた。
雰囲気も険しくて。
気づかなかっただけ?
それとも……
また、見てみぬ振り?
って、こんなこと考えてるあたしが、
一番ダメなのかもしれない……。
――勇気を出せない、臆病者。
だけど、このままは嫌だよ!