ぴーす
「骨折されてますね……。でもひどいわけではないので、リハビリを含め3ヵ月あれば大丈夫でしょう」



それダメだよ医者。
どこがひどくないだよ。

こんな経験なんてまったくないし、そりゃ牛乳嫌いだし骨は丈夫ではないと思ってたけど……。

なんでよりによって骨折かなぁ。



「ちょうど冬休みのようですし、ゆっくり体を休めてください」


ニコッと笑ったお医者さん。
だけどあたしには悪魔に見えた。


「ありがとうございます、院長先生……」


お母さんが、長い髪を垂らしながら深々とお辞儀をする。
それを見ていたあたしだけど、慌てて首で頭を下げた。

すぐにでも病室へ行って落ち着こうと、必死で大きな車輪を、ぎこちない手つきで回していく。

自動にしろ!と訴えたくなるほど操作は難しくて、方向転換ができなければ、Uターンすることすら無理難題。

そんなあたしを見かねて、お母さんやお医者さんもとい院長先生が、取っ手のところを押してくれた。


足がないと不便。

歩けないなんて不便。


初めてそう思った。


当たり前だ。



つい昨日まで、ちゃんとあったんだから――。









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