ぴーす
咳を混じらせて笑うおじいさん。


「嬉しいねぇ。こんな若い子が来てくれて」


「そ、そうですか?」


あたしはこのとき初めておじいさんの顔を見た。


触ったら伸びそうな茶色っぽい肌に、数え切れないほどのシワ。
着ている緑色のパジャマは昔からの使い古しのよう。


無造作にたっている坊主にしては長すぎの髪は、全部白く染まっているけど、綺麗に思える。

真ん丸い瞳は、蛍光灯のせいか、やけに輝いて見えた。

視線はこっちを見ているんだけど、その瞳の中にあたしは見えなかった。


おじいさんの輝いてる瞳に、

あたしは映っていなかった。




「飴舐めるかい?」


あたしを思考から掬い出すように聞いてきたおじいさん。

おじいさんの手の中には、黄色いビニールの包み。
その包みを見ると、容易にオレンジ味ということが想像できた。











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