ぴーす
「あ……今はちょっと……」


目を泳がせ、しどろもどろしながら答える。

今あたしは、ベットの上半身が動かせるおかげで、なんとか座った体制になっている。
だけど足を上げてるせいか、高さを間違えたせいか、微妙に上向きになっていた。

ギシギシと何かに擦れるような音が、斜めに起き上がっているベットの上半身から聞こえてくる。
その音が鳴るたびあたしは、今にでも倒れるんじゃないかと心底不安になる。

だから飴を舐めてる最中に倒れると、きっと喉に詰まって病室内を賑やかにしてしまうだろう。


もちろん、悪い意味で。




「そうかそうか」

おじいさんはまたニッコリと笑いながら、飴をベットに付いてる白いミニテーブルに置いた。

カランと飴が左右に揺れる音が耳にしがみついた。

おじいさんの力の入ってない左手から離れた飴は、定位置を守り抜く。

そこからズレることなく、止まるものかと影が楽しそうに動いている。










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