ぴーす
まだ小さな振動を繰り返す飴玉を、今にでも手の中に入れたかった。
そして口の中に入れ、甘くて後味の残るこじんまりとしたオレンジを食べたい。


昨日から心にまとわり付くモヤモヤを、はやく消したい。


そんな気持ちでいっぱいだった。




「じゃあこれを食べな」


あたしがどんな表情をしていたかわからないけど、おじいさんはとにかくニコニコと太陽みたいに笑っている。

そんなおじいさんの茶色い手元には、長方形の銀紙が存在していた。


あ、懐かしいな。
小さいときよく食べたっけ。


おじいさんの指からそれをスルッと抜き出す。

固くもなく柔らかくもない独特の感触。


やっぱり、チューインガムだ。


親戚の家でよく食べさせてもらった。
子供心をくすぐる甘い香りは、思わず頬を緩ませる。

銀紙を開けると、少し白い粉が付いているピンクいガムが現れた。










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