ぴーす
ゆっくりと、山さんのほうへ顔を向ける。
山さんはさっきみたいに、ニッコリと笑っていた。
「女の子は体大事にせんとかんよ。学校にも行かんとかんしな」
山さんはどこかの方言で、あたしに伝えてくる。
「山さーん! 検査のお時間ですよー」
白いナース服を着た看護師さんが山さんを呼ぶ。
その後ろから、院長先生があたしに近付いてきた。
「じゃあね、桃花ちゃん」
山さんは看護師さんの手を借りながら、ベッドを降りる。
あたしにはおじいちゃんがいないから、山さんと話すのはすごく新鮮だった。
「桐生さん。調子はどうだい?」
ベッドまで近付いてきた院長先生は、お医者さんらしい優しい笑みで、あたしに尋ねてきた。
「あ、大丈夫です」
「そうか、よかった。足、下げようか?」
「いいんですか!?」
院長先生の言葉に、思わず声が大きくなる。
包帯だらけの右足が、無意識にブラブラと空気を揺すった。