ぴーす
帽子を取った中野は、赤い服も脱ぐ。
下に着ていた茶色い服がよけいに目立った。
もともと付いていたらしい、角があるフードをゆったりと被り始める。
サンタの面影はなく、ちゃんとしたトナカイだった。
……といっても、赤鼻も取っちゃったから、シカにも見えるんだけど。
「……んで、クリスマスだからって何?」
中野が病院にいる理由はわかったけど、クリスマスだからってのは合ってない。
中野はベッドの近くに寄り、白い丸イスに遠慮なくドカッと座った。
「クリスマスパーティー。準備とか手伝わされんの」
しっかりとあたしのほうを見た中野の瞳は、光のせいか何色にも見えずただ輝いていた。
「……じゃあ、パーティーに出てるお菓子とかも作ったんだ」
少し薄笑って聞いてやる。
パーティーには行ったことないけど、たぶん家のとあまり変わらないんだろう。
プレゼントとかも用意したんだ、きっと。