ぴーす
男子が女子に聞かれるのは嫌だろう。
特に中野みたいな奴なら。
お菓子とか作りそうにないし。
案の定、中野はそっぽを向いて黙ったままだ。
「毎年飲み物とかも注いであげてるんだ? 優しー」
中野のそんな姿を想像して、思わず口元がニヤけてくる。
ついついイジってしまうのは、しばらく同級生と話してないせいだ。
あたしは悪くないもんね!
パキッ
何かが割れる音がした。
そしてパラパラと何かこぼれるような。
音のしたほうへ視線を向けると、中野がビニール袋を膝に置いている。
そのすぐ上には、中野の両手。
「……クッキー」
低く呟くような声で、あたしの目の前に差し出された。
さっきまで話していた、お菓子。
クッキーと呼ばれるお菓子を、中野の片手から恐る恐る受け取った。