ぴーす
ビニール袋からクッキーを一枚出し、袋を軽く結ぶ。
ドアに向かう中野は、あたしのほうへ振り返った。
「メリークリスマス」
お母さんが言ったのと同じ言葉なのに、明らかにあたたかさを感じた。
クッキーを一口ずつ食べる中野は、またドアのほうへ進んでく。
その度にパラパラと落ちる粉。
中野はそれに気づいているのかいないのか、ドアをバタンと閉めて出ていった。
また白い部屋に、あたしだけがポツンと残る。
だけど、膝上に感じる重量と、真横にあるプラスチックがあたしを寂しさから紛れさした。
そして……床に散らばる黄色いカケラ。
そのほとんどはドアへと続いている。
「格好ついてないから……」
一人で苦笑して、病室にも響かないくらいの声で呟いた。