ぴーす
「あのっ先生!」
放課後、誰もいない教室で、新しい担任に話しかけた。
先生はキョトンとして小首を傾げている。
「ね、根本芽亜莉さんって、どうしたんですか!?」
いきなり尋ねたあたしと、出てきた芽亜莉の名前に、先生の表情が曇った。
「あぁ……。桐生さんはたしか、根本さんと仲良かったんだったね」
誰かから聞いたのか、ポツポツ喋り始めた先生は、授業中より声のトーンが低くなってる。
「根本さんは……前のクラス、桐生さんのクラスでいろいろあったみたいなの。
詳しくは知らないけど……桐生さんの入院中に大変だったみたい。
でも病気ではないわよっ。ただちょっと……まだ来ることはできないみたい。
わかってあげてね……」
俯いて話す先生は、それだけで良い人なんだってことがわかった。
それから先生は、両手で持っていた学級名簿をギュッと握りしめた。
先生の目が真剣そうに光る。