ぴーす

「はぁ……」


ため息をつく。
冬だったら白く濁っていくのに。
地面に放ったまま空気に混じっていった。



帰り道。
一人でトボトボ歩いていく。
鞄をひじに掛けたまま、何度も何度もため息をついた。


どうしたら、元に戻れるんだろう。


そればっかり考えながら、家へ向かっていった。




♪ ぽっぽっぽー

♪ ハトぽっぽー




ん?
また、聞こえてくる。
はとのうた。


「誰……?」


そう呟いて、歩いてきた一本道を駆け足で戻った。



「あ……」


優しい声の主。


「あ、こんばんは」





――中野だ。


「なんかよく会いますねー」


歌っていた本人は、いつもの無表情であいさつをしてくる。


「こ、こんばんは……」


中野はネイビーブルーのパーカーを着て、足元には小さな白い犬がいた。
赤い首輪についている紐は、しっかりと中野の手に繋がれている









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