ぴーす
「だからお前も、諦めないでいれば?」


ぶっきらぼうに何かを伝えようとする中野。


いつかは――追いつく?


あたしも、芽亜莉に追いつけれる?




また一緒に――笑える?





「まぁ、相手が止まればすぐだけど」


中野が向けた視線の先には、電柱をガリガリ引っ掻いている犬がいた。
それに夢中で、犬は電柱から一歩も動こうとしない。



「なっ?」


ぎこちなく、でもうっすらと優しく笑う中野の瞳は、光の反射で少しブルーが入っていた。


それからゆっくりと犬に駆け寄る中野は、また赤い紐を持つ。


なんだかんだ、困ったときに現れるのは偶然じゃないかもしれない。


ヒーローより通行人が似合う中野は、きっと救世主かなんかだ。

それも似合いそうにないから、ピンチヒッターかヒントはくれるけど答えようとしない、ゲームに出てくるずるい長老かも。



中野が長老。

うん。


なんかシックリくる。











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