*CrimsonDoll【さみ短】
「このッ・・・・・お前ぇーっっ！」




青年は右手の拳を振り上げ、相手の脳天に向かって急降下させた。




だが、その手は届くことなく途中で進むのをやめ、力なくだらりと垂れ下がった。驚愕が青年の顔に張り付く。



唇を震えさせて、それでも青年は相手を睨めつけんとばかりに必死にもがいた。



だが、腹部に走った激痛は止まず、赤い血がただ白衣を伝って流れ落ちた。




２滴目が地面に広がった頃、硬直していた青年の体はスローモーションで後ろに倒れてゆく。



男は掴みかかられた所に出来たしわを伸ばしながら、倒れ行く青年をさらに蹴飛ばした。





「はははっ、あんたみたいな真面目な研究者さんが居てくれるから助かるんだよなぁ！」






痩せていた青年の体は思っていたよりも遠くまで飛んでいた。闇に紛れて姿が確認できない。




男は青年が飛んで行った方向にゆっくりと歩みを進め、近付いた。



まず、足が見えそれから徐々に全身が見えるようになる。腹部には突き刺さったままのナイフと赤。







だがそこで男は違和感を覚えた。青年の全体が黒ずんでいる・・・・。


薄い黒の幕・・・影が覆っているのだ。








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表紙・目次

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