僕たちは回り続ける
外をぼんやり眺めていると和風の豪邸にたどり着いた。

社宅住宅といわれてもおかしくないほど広いそれは木造建ての風潮漂う家だった。

中に案内される間も庭園に視線が行く。色とりどりの花が上品に咲き誇り甘い香りを漂わせている。


「入れ」


案内されるがままに中に入る。庭園を通り過ぎる時に、離れた場所にある小屋が目につく。

そこから三味線の音と一緒に歌声が聞こえた。


心地よい音色に耳を寄せて駿の後を追った。


「ここが俺の部屋だ」


畳が一面に敷かれてた、和室。まあ、和風の家に洋室があるほうが違和感があるかもしれないが。机にはすでにお茶と菓子が置いてあり、どちらも高そうだった。


「ポテチでいいのに」

「生キャラメルはいらないのかよ」

「いるっいるっ」

「駿君コレ、フラカンが載ってる雑誌」

「ども」


フラカンこと、フラワーカンパニーとは、スリーピースバンドだ。取っ付きやすい歌声にしっかりとした歌唱力。今はまだマイナーだが、じわじわと人気は伸びている。


「コレなかなか手に入らないんだよな」

「予約したの」


生き生きとした駿の表情が本当にそれが好きだということを物語っていた。


「借りていい!?コピーしてぇ」


(……なんだ、笑えるんじゃない)
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