僕たちは回り続ける
「……何してるのかな?」

「義則さん」

「まあ、仲良きことはいいことかな」


ふふ、と微笑を浮かべ彼は現れた。息を切らせつつ、自分の席に鞄をかける。そして目配せをこちらにした後ハードカバーの本を取り出して読み始めた。のぞいてみると難しい漢字がずらずらしている。


それもそのはずだ。彼は編入試験すべて満点だったのだから。それを梓たちは知らないが、本人自体が気にしていないのだから噂になることもなかった。


「離れろよっ」

「いやーん」

「いやよいやいやよも好きのうち」


あきれてものが言えない。自分が駿のことを例え好きだとしてもこんな風にストレートに感情を表現できないだろうから、そこのところは尊敬するがちょっとは人の目を気にしてほしい。


その場から去ろうとすれば駿にガンを飛ばされるし義則に頼るわけにもいかない話で梓は3人と一緒くたにされていた。かなり迷惑である。前からの友達に「大変だねぇ」なんてヘラヘラ顔で言われた時は怒りさえ湧いた。


駿はというと静香の派手なネイルアート解かされた爪が食い込みそうだった。悪いがかかわりたくないので助ける気はこれっぽちもない。ネイルピアスのされたジェルネイルは、どう考えても校則違反である。

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