永遠の約束-約束のはじまり-











「お取り込み中のところ悪いんだけど………」





 コンコンというノックと共に、一人の背の高い男がドアに凭れるようにして立っていた。


「龍野(たつの)先輩!」





 今まで、憂いでいた表情の慈は表情を一変させ、龍野の元へと飛び跳ねるように駆け寄っていく。


「どうしたんですか? 先輩がわざわざ部室にまで顔を出してくれるなんて久しぶりじゃないですか!」





 いつもなら態度がでかい慈だが、この龍野の前でだけは慈も可愛らしい女の子に戻る。


 そんな慈の姿を綺羅たちは苦笑しながら見ていた。





 相良って、龍野先輩のことを好きなの、丸わかりだよな………。


 こいつに恋愛感情とかがあるということにも驚きだが、それ以上に先輩の前でのこいつの表情にはいつも驚かされる。





 だが、慈が龍野を好きになるのは仕方がないことかもしれない。





 龍野は見た目はクールな美少年。


 綺羅は可愛らしさを残す感じだが、大人の雰囲気を持ち合わせた龍野は年上からの人気も高く、大学のほうではすでに入学する前からファンクラブが設立されているとも言われている。





 この青涼学園(せいりょうがくえん)で綺羅と人気を二分するのがこの龍野翔(たつのしょう)だった。


 おまけに、翔はこの私立清涼学園の創設者の孫であり、現在の理事長の一人息子。


 容姿、性格、家柄の三拍子が揃った男だった。





 綺羅は冷静に慈と翔のやり取りを見ていた。


 すると、ふと、こっちを見てきた翔と目が合う。





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