永遠の約束-約束のはじまり-
和田あゆみが行方不明になった、この事件。
ただの何者かに連れ去られたとかそういう次元の話ではなかったというのが綺羅が翔から聞かされた内容だった。
和田あゆみは担任の倉知に日頃の生活態度の悪さの注意も込めて、仕事をさせられていた。
その仕事が終わったのが七時半頃。
確かに、一般的には遅い時間のような気がしないでもないが、外を見た限り、まだ大丈夫だと判断した倉知は和田あゆみをそのまま帰した。
だけど、あゆみは家に帰るどころか、連絡も取れないまま行方不明になってしまった。
それだけではなく、あゆみの靴が一階廊下に投げ捨てられているかのように散らばっていたのだった。
もちろん、学生鞄も。
そのことから、あゆみが何かにあったのは学校の中だということだ。
その時刻に、教師は仕事を頼んだ担任の倉知の他にも六人の教師がまだ職員室やそれぞれの教室に残っていた。
だけど、その七人が何かの異変に気づいたことはない。
他にも遅くまで部活動をしていた生徒がバスケ部と野球部、バレー部と残っていた。
その者たちも誰も何かしらの異変に気づいたものはいなかった。
ただ、和田あゆみに何かがあったとされるその場所には一枚の奇妙な札と微かに飛び散ったどす黒い液体が数滴残っていた。