永遠の約束-約束のはじまり-
「ここ………なんですよね?」
綺羅の問いかけに翔は、黒く小さな斑点のようなシミがこびりつく廊下の床にしゃがみこみ手を這わす。
「ああ。このシミ。何度拭き取っても消えないのさ。不思議だろ? まるで、ここが犯行現場だと意思表示しているようにさえ見える」
フッとシニカルな笑みを浮かべた翔を見ながら、綺羅は神経を集中させながら周りを一周見渡す。
「警察は………、なんて言ってるんですか?」
「何も。現実離れした事件なら、警察の手に負えるようなものじゃない。ただ、和田あゆみの行方不明当時の足取りを探しているよ」
「そうですか………」
「だけど、それが打ち切られるのも時間の問題だろうな」
「どうしてですか?」
翔のその言葉に一番早く反応したのは、今まで黙って周囲を見渡していた真里だった。
「行方不明、失踪………。日本の中で、今、どれだけの失踪者がいると思う?」
「それは………」
言葉に詰まる真里に翔は答えを突きつける。
「数え切れないほどさ。警察が今、調査しているのは事件性があるかどうかということ。これでもし、事件性がないと判断されると、この捜査は打ち切られる。彼女の場合、綺羅にふられたという事実がある。それが嫌になって、自分から姿を消したと警察はにらんでいる」