永遠の約束-約束のはじまり-
「俺は自分が情けない。もし、吉備が海堂たちが言うようにこの事件になんらかの形で関わっているのだとすると………。そう思うと、なぜ気づかなかったんだって情けなくて仕方がないんだ!」
綺羅はフ~と軽く息を吐くと、唇に手を当てて、「シッ」と雅俊に告げた。
静かになった部屋に微かに聞こえる階段を上がってくる足音。
その後、すぐにコンコンと軽いノックが鳴った。
「はい」
綺羅は部屋のドアを開けると、目の前に立っていた美恵子からさっさと飲み物が乗ったお盆を受け取った。
そして、すぐにでも部屋のドアを閉めようとしたのだが………
「ちょっと!」
すぐさま、それを阻止するように美恵子が閉めようとしていたドアを押さえる。
「なんだよ」
綺羅は不愉快極まりないと顔に出した表情で美恵子を見る。
だけど、美恵子は全く怯む様子はなかった。
「お母さん、雅俊くんに挨拶してないもの」
「はあ!? 挨拶なら、帰ってきた時に軽くしただろ?」
挨拶って、あれが挨拶じゃなければ、どんなのが挨拶だって言うんだよ。
美恵子の考えは綺羅にはわかっていた。
好奇心旺盛な美恵子のことだ。
雅俊のこの状態が気になって仕方がないのだろう。
下で説明したことで諦めてくれたかと思っていたのだが、やはり、あれぐらいでは納得がいかなかったのだろう。
ハァ~…と綺羅は溜息を吐いた。