永遠の約束-約束のはじまり-
「もう! 聞きたいんでしょ? 聞きたいなら聞きたいって言えばいいじゃない!」
慈の言い方はまるで綺羅が聞きたいのを我慢しているような言い方だ。
だけど、本当のところは綺羅よりも慈のほうが言いたくて仕方がないのだ。
そのことを知っている綺羅は溜息を吐いた。
今から、学校に侵入しようという時に、こんな鬱陶しいことに付き合ってられるか。
綺羅は別に何かを言うこともなく、中等部の部室棟が並んでいる塀をよじ登った。
セキュリティーは万全なのだが、それは校舎だけのことであって、この部室棟が並んでいる裏の壁の辺りは塀の高さも低くなっていて塀の上に微かについている金網をよじ登ればいいだけだ。
意外とこれが登りやすかったりする。
軽々と壁をよじ登り金網のところまで行くと、綺羅は雅俊に後について来いと顔を動かした。
「ちょっと~、私たちは~?」
置いていかれそうな危機感を抱き始めた慈は口を膨らませて登ろうとしている雅俊のズボンの裾を思いっきり掴んだ。
「うわっ!」
その拍子に雅俊はバランスを崩し、思いっきり地面に尻餅をついた。
「いってぇ!」
地面が砂ならまだしも、コンクリートの上にそれなりの高さから落ちた雅俊は顔を顰めて腰を擦った。