永遠の約束-約束のはじまり-





 幼なじみでありながら、詠美のことを特別に想っていた内藤は、すぐさま実行へと移す。


 それが、あの事件へと繋がった。そして、偶然その場を目撃してしまった光浦吉備。


 彼は見て見ぬふりをするだろうと思っていた二人。


 だけど、予想に反して吉備は和田あゆみを助けようとする。


 そのことにより、吉備まで行方不明となることになった。





 その吉備は、衰弱はしていたものの、食事は与えられていたらしく、命に別状はなかった。


 二日ほど入院したが、すぐに退院し、新学期が始まる頃には登校できるだろうということだった。





 この事件の根底にあるものは、和田あゆみのいじめである。


 だけど、あの事件のおかげで和田あゆみは被害者という立場で、何かを責められるということはない。


 資料には彼女に対して何かがあるとは書いておらず、綺羅たちは資料を読んでもすっきりすることはできなかった。


 ただ、綺羅の中には一つだけ希望があった。


「前と同じというわけにはいかないだろうな………」


「麻生くん。それって、どういうこと?」





 綺羅の呟いた一言に慈はすぐさま聞き返す。


「今までいじめをしていた相手に助けられようとした。恨まれる事実より、恨まれていると思っている人物に助けられた事実のほうが、人の心には深く響くんじゃないか?」


「そうかな? あれほど酷いことをするような人間の心に響いたりするもの?」





 納得がいかない慈は綺羅に反論する。


「さあな。確かにお前の言うとおりかもしれない。だけど俺は、前の通りにはいかないと思うぞ」


「え~…?」





 やはり納得できない慈は声を漏らす。


 そんな慈に笑みを浮かべながらも、綺羅は遥か彼方へと視線を向けた。










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