永遠の約束-約束のはじまり-
「………ふ、ざけるなっ!」
「あ、麻生…くん?」
どちらかというと無口で温厚なイメージが強かった綺羅の、声を荒げる姿を初めて目の当たりにした理佐子はビクッと体を奮わせる。
冷たい瞳で理佐子を睨みつける。
だけど、怯えた理佐子の顔を見て、綺羅はハッと意識を戻す。
「あ………、す、すみません………」
途端にいつもの綺羅に戻ったかと思うと、綺羅は理佐子に深く頭を下げる。
「急に怒鳴ったりしてすみませんでした」
「え? ………あ、ううん。いいの。ちょっと、びっくりしたけど大丈夫」
頭を下げた綺羅を見ながら戸惑いながらも「大丈夫」と手を綺羅の肩に添える。
謝ってくれたことで安心したのか理佐子の表情も少し和らいだ。
だけど、その後に続いた綺羅の言葉は理佐子を打ちのめす衝撃を秘めていた。
「先輩。すみません、俺、やっぱり無理です」
「………え? 何が? ………無理って何が………?」
本当はわかっていたのだろう。
だけど理佐子は知らないフリをして震える口を抑えるように明るく取り繕う。
声には震えがすでに表れているのに、それを必死に隠そうとしているみたいだった。
だけど、どんなに明るく取り繕うとも綺羅には理佐子の表情を見ることはできなかった。
綺羅は頭を下げたまま、ずっとその体勢を崩さない。
そこには強固な決意が込められているようで余計に理佐子を不安にさせる。
「俺、本当はずっと好きな人がいて。中学の時、先輩が告白された時に断ったのもその子のことが忘れられなかったからなんです。………俺、もう忘れようと思って先輩の告白を受けました。だけど………」