永遠の約束-約束のはじまり-
ゆっくりと階段を下りてリビングに入ると、テンションの高い母親の姿に綺羅は呆気に取られた。
「な、なにしてんの? 母さん」
「あらっ、綺羅。おはよう」
顔だけ綺羅のほうを向きながら、母である美恵子(みえこ)はテレビに向って必死に体操している………というより、踊っている。
「これね、見てわからない? 目覚めの体操よ」
「それはわかるけど………」
呆気に取られている綺羅が納得できないのはそれがどうしてNHKの教育テレビの子供番組を見ながら踊っているかということだった。
「ご飯なら、キッチンに用意してあるから、適当に食べてて」
言われるままにキッチンに行く綺羅だが、こんな目の前でバタバタされているとなんだか食べる気も起こらない。
まあ、自分でもそれはわかっているのかきれいにラップはかけられていたが………。
仕方なく綺羅は手馴れた手つきでコーヒーメーカーに用意してあるコーヒーを自分のカップに注ぐと、食パンをトースターにほうり込み、スイッチを回した。
何をするわけでもなく、コーヒーに口をつけていると、目の前に用意されているもう一つの食事が目に入った。
一瞬考えた後、綺羅はリビングの壁時計に目をやると、眉根を寄せた。
「母さん。陸(りく)ってまだ起こさなくていいわけ? 俺よりも、あいつのほうが先に家出るだろ?」
「え?」